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ダウン症は先天性の疾患ですが、医学の進歩に伴って短命ではなくなっています。現在はダウン症でも平均寿命が60歳を超えていますから、大人のダウン症の人も多く生活していることになります。
では、子供の時と大人になってからのダウン症の人の変化は何か違いがあるのでしょうか。
ここでは、大人のダウン症の症状の特徴や、必要な健康管理についていくつか解説します。
目次
ダウン症というのは、正式名称をダウン症候群と言い、先天性の疾患です。つまり大人になってからかかる病気ではありません。
私たちの体は細胞でできていますが、その細胞の一つ一つに染色体が存在しています。染色体は、数々の遺伝情報などをもっており、細胞分裂をすることでその情報が体に行き届く仕組みになっています。
通常の染色体は46本あり、それが23対になって情報を持っているのですが、ダウン症の場合、21番目の染色体の数がなぜか2本ではなく3本になっていて、その数の異常が心身の成長に通常とは違う影響を及ぼしているといわれています。
ダウン症の人の多くがこの21番目の染色体異常(21トリソミーともいいます)で、これを発見・発表したイギリスのダウン医師の名前からこの疾患名が付いたのです。
ダウン症の人は顔つきや指が短いなどの特徴があり、精神的にもやや遅れが見られます。知能面でも若干低下傾向にあり、さまざまな症状が混在しているのが特徴ともいえるでしょう。
ダウン症の場合、大人になると子供の頃とは違った症状が出ることが多くなります。原因はその人それぞれなので特定はできませんが、心身の発達に伴って合併症や精神的な症状が出てくるようになります。子供の頃は素直に受け入れることができたことでも、年齢を重ねることでいろいろな経験をして受け入れがたい状況になることもあります。
その葛藤が症状の変化として現れることもないとは言えません。すべてのダウン症の大人が変化するわけではありませんが、成長の証しとしての変化もあるということは事実でしょう。
ダウン症の大人の場合、合併症を含めさまざまな疾患に注意しなければなりません。代表的なものをいくつかお話ししましょう。
もちろんこれは子供の頃にはあまり見られない症状ですよね。ダウン症の大人は、肥満傾向にあるので、どうしても高血圧や動脈硬化といった症状が出やすくなります。子供の頃に比べて、意識していないと運動量が減ってしまうために、肥満になりやすく、その結果生活習慣病になりやすいといわれています。
これは、子供のダウン症でも起こりやすい症状ではありますが、発症するのが大人になってからというパターンも多いのが特徴です。子供の頃に治療して改善していても、大人になってまた再発するという人も少なくありません。加えて、無気力や疲労感、むくみや動作緩慢などが起こりやすくなります。
これは認知症の一つですが、ダウン症の大人もかかりやすいといわれています。物事が忘れやすくなる、体の動きが鈍くなる、うつ病のような症状が出るなど、心身ともに機能低下が起きりやすくなります。
ダウン症の場合、子供のころから合併症には注意が必要といわれていますが、これは大人になっても変わりません。特に大人の場合には早期に白内障を発症しやすいので、注意が必要です。
ほかにもダウン症の大人が変化していく症状はありますが、生活環境の変化が絡んでいるケースも多いので、周りがどれだけ変化に気付くことができるかという点も重要だといえるでしょう。
ダウン症の場合、歯根が短いことも身体的な特徴の一つなのですが、大人になるとそのことが原因で歯周病になりやすいという点があります。また免疫機能の低下も関係していて、歯周病の進行が速いのです。
これまでお話ししてきたように、ダウン症の大人の場合、さまざまな疾患や変化が起こります。それを自分で管理することはとても難しいため、周りがある程度管理をする必要があるといえるでしょう。
身体的な問題については、定期的に検診を受けて、数値に異常がないか症状の進行状況などを詳しく検査します。必要に応じて投薬や治療を受けることで症状が安定し、生活することができるでしょう。歯科であれば、定期的に歯科受診をして、歯の健康管理に努めることが重要です。
また、精神的な症状については、社会に出てからの経験がトラウマになっている可能性もあるので、原因を特定し休養をするという方法も健康管理の一つといえます。アルツハイマー病の可能性もありますが、ダウン症の大人の場合には、精神症状が出た場合でもまずは身体的な原因を探ることが多いので、かかりつけ医に相談することをおすすめします。
ダウン症は大人になってからも新たな症状が出る、これは心身の成長に伴って起こるものもありますし、合併症が引き起こしてしまうものもあります。大人だから自分の健康管理はできるかもしれないと思うかもしれませんが、やはり周りのサポートはかなり重要ですし早期発見にも役立つでしょう。
ダウン症の大人で、何かおかしい、前とは違うという症状が気になったら、出来るだけ早い段階でかかりつけ医に相談しましょう。