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ダウン症は正式名称を「ダウン症候群」といい、染色体の異常が原因となっている先天性の疾患です。1866年にこの疾患の特徴を発表したイギリスのダウン医師の名前にちなんで付けられたといわれています。
私たちの体は約37兆個の細胞からできており、その細胞の核の中には染色体があります。この染色体は46番まであるのですが、その21番の数が従来2本であるのに対し、稀に3本になってしまうことでダウン症が発生することがわかっています。21トリソミーとも呼ばれ、耳にしたことがある人もいるかもしれません。
ですが、このダウン症についての詳しい知識を持っている人は意外に少ないのも事実です。ここでは、ダウン症の症状や原因などを詳しく見ていきましょう。
目次
ダウン症は、簡単に言うと染色体の数が3本となることで起こる先天性の疾患です。染色体についてはこの後お話ししますが、身体面・精神面での特徴について見ていきましょう。
ダウン症の身体的な症状は、顔つきでしょう。顔が小さく扁平、鼻が低い、目が吊り上がっている、といった特徴があります。出生時には気が付かなくても、幼児期になってからこうした身体的な特徴が出るケースも少なくありません。
また、ダウン症の場合には、顔の筋肉の緊張が低いために、口が開いたままになっていることも多いです。舌が大きいということもあって、口の空いた状態が目立つのかもしれません。
さらに、ダウン症の場合、心臓と消化器の先天異常が見られます。低身長で肥満になりやすいのも、ダウン症の身体的な症状の一つとも言えますね。
そして、合併症が起こりやすいということも症状の一つになります。もちろん、体のさまざまな部分で影響を受けることはありますが、必ずしも合併症が起こるわけではありません。
ダウン症は、身体的な症状だけでなく精神的な症状も目立ちます。知能指数については、標準を100とすると、ダウン症の小児の平均値は50といわれています。知的障害が重くなればなるほど、自閉症行動のリスクも高く、成人・小児に関わらずうつ病のリスクも高くなっています。精神的・身体的に発達が緩やかだということも、ダウン症の症状だと覚えておきましょう。
ダウン症の原因は、染色体の数が多いということです。染色体は、私たちの体の中で遺伝情報の伝達や男女の性別など、重要な情報となっています。細胞が分裂を繰り返すことでその情報が行き渡り、体を作ってくれているのです。
本来私たちの体の中には、染色体が46本あるのですが、これが何らかの原因で47本をもって生まれた人がダウン症となります。ダウン症のタイプは、この染色体の何番目の本数が多いのかによって決まります。
通常、染色体は2本で1組なのですが、21番目が3本になっているのが、「21トリソミー」と呼ばれているダウン症です。ダウン症の多くがこのタイプといわれており、代表格ともいえるでしょう。
さらに、21番染色体の一部が、他の染色体にくっついて(転座)しまい、一部がトリソミーとなっている状態を転座型と言います。そして、全体の数パーセントではありますが、モザイク型というタイプも存在します。染色体異常がある細胞と、正常な細胞が入り混じっていることからこの名前が付けられたといわれており、他のタイプよりも症状が軽い場合もあるようです。
ダウン症の発症確立はどのくらいになるのでしょうか。日本では700人に1人といわれていますが、これは母親の年齢も大きく関係しています。
出産の年齢が高齢になればなるほど、ダウン症の発症率は高くなるといわれています。母親が20代前半の場合には1000人に1人という確率に対し、40歳以上になると100人に1人という数字になっているのです。
しかしながら、母親が若いからといってダウン症の子供が生まれないという保証はありません。また、ダウン症は遺伝による可能性もあるという人もいますが、これも確証はありません。
出産前にダウン症の検査をする場合は、母体の血液を採血するクワトロテストと、羊水を調べる2つの検査方法があります。クワトロテストは妊娠早期に受けることができるのですが、ダウン症の約8割の検出精度となっています。この8割という数値と、偽陽性が数パーセントあることから、日本ではあまり行われておりません。
羊水検査は、注射器をお腹に刺して、子宮から羊水を採取する方法です。羊水の中には胎児の細胞が浮いているので、その細胞の染色体を調べることが可能となります。検査確率は99%といわれていますが、子宮に針を刺すことは胎児にも負担が大きいです。確率の高さがそのままリスクの高さにつながっていることを覚えておく必要があります。
ダウン症は残念ながら治療方法はありません。ダウン症の原因やタイプなどはわかっているのですが、それを根本的に治す方法はまだ解明されていないのです。
ですが、ダウン症の合併症に関しては、医療の発達とともにさまざまな治療法が確立されて乳幼児期のあいだに改善できるものが多くなっています。
ダウン症(ダウン症候群)は、染色体の異常が原因となっている先天性の疾患です。ダウン症は、出生時にはわからずに成長とともに発症するというパターンも少なくありません。治療法は今のところありませんが、合併症などの対策などは医療技術とともに進んでいます。