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ダウン症にはごくまれではありますが、モザイク型というケースがあります。ダウン症を大きく分けると、3つの種類(タイプ)になるのですが、一般的に多いといわれているのが、21トリソミー。これは、染色体が本来一対になっているはずが、21番目の染色体の数が2本ではなく3本になっているタイプです。ダウン症=染色体の異常ということなのですが、21トリソミー以外ではその21番目の染色体の一部が14番染色体にくっついてしまっている転座型、21トリソミーと正常の染色体が混ざり合っているモザイク型もあります。
ここではそのモザイク型について、原因や特徴などについて解説します。
目次
ダウン症は大きく分けると、標準型(21トリソミー)と転座型、モザイク型の3種類になります。
モザイク型は、ダウン症の中でも非常に少ないケースです。特徴については後でお話ししますが、ひとまずダウン症の種類について少しお話ししておきましょう。
まずダウン症のほとんどを占めているのが、21トリソミー。染色体の21番目が2本でなく3本になっているために、ダウン症特有の症状が出てしまうものです。
次に多いのが転座型。これは、21番目の染色体の一部が、他の染色体にくっついてしまい、過剰になる状態です。ほかの染色体にくっついてしまうことを転座ということからこう呼ばれています。遺伝によるものがほとんどということも、転座型の大きな特徴です。
そして、ダウン症の種類の中で一番少ないのがモザイク型。染色体の数が46本23対のものと、47本23対のものとが混ざり合っている状態です。正常な染色体とそうでない染色体が混じっていることで、他のダウン症とはやや違う症状が出るケースもあります。
ダウン症でモザイク型の原因としては、受精卵の細胞分裂の異常が挙げられます。もともと染色体というのは、受精卵の細胞分裂の際に、本来なら精子と卵子それぞれ一本ずつ染色体を受け取り、46本23対となるのです。
モザイク型の場合には、この細胞分裂の際に何らかの異常が発生して、染色体の分裂が正常に行われないもの、つまり46本の染色体と47本の染色体が入り混じってしまうわけです。21トリソミーを持つ細胞と持たない細胞が混在していることになります。ダウン症のほとんどが、21トリソミーなのですが、モザイク型はそうでない染色体も持っているという、非常に珍しいパターンです。そのため、詳しい原因がわかっていないのが現状といえるでしょう。
モザイク型のダウン症の大きな特徴としては、発症確立が低いことが挙げられます。標準型のダウン症の発症確立は平均すると0.18%、日本でいうと1年に2200人ほど生まれている計算になります。その中でモザイク型の発症確立は2%ですから、44人ほどが生まれるという計算になり、かなり少ないということがわかるでしょう。
そのほかの特徴としては、他のダウン症に比べてIQが高い傾向にあることが挙げられます。もちろん、モザイク型であれば必ずIQが高いということではありません。これはアメリカや日本で行われた、標準型とモザイク型のダウン症の子供を対象にした研究結果で、標準型のダウン症の子供に比べてモザイク型の子供のほうがIQの平均値が高かったという報告から推測されているのです。
また、モザイク型のダウン症は、標準型に比べて発達の遅れが少ないということも特徴の一つです。モザイク型のダウン症の子供と、そうでない子供の発達の度合いを比較したデータでも、標準型と比べると発達に遅れが見られない部分が多いという結果が出ています。これらは全ての染色体の異常ではなく、正常な染色体とそうでない染色体がモザイクになっていることから、標準型のダウン症の子供と比べると、全体的な発達の遅れが少ないといえるでしょう。
ただし、身体の変化に関しては、標準型とモザイク型に大きな違いはありません。つり上がった目や低い鼻、小さい頭などのダウン症特有の顔つきや、筋肉の緊張度の低下、小柄で肥満傾向は同じです。また、疾患に関しても、内臓の先天的な異常や合併症といった部分は、標準型・モザイク型ともに症状の一つといえます。
ダウン症の人の生活は、乳幼児の頃から様々なサポートや配慮が必要となります。モザイク型であれば、IQが高めで、発達の遅れも少ないからと、そうした配慮が欠けてしまうと、やはり生活に支障が出る恐れがあります。
確かに標準型と比べると、発達の遅れが少ないかもしれませんが、遅れている部分はあります。その遅れに焦ることなく、見守るということが周りの大切なサポートといえます。
また、療育を行うということも大切です。その子の成長に合わせた、生活の仕方や会話など、特別な訓練を交えて生活のペースを確立させることが重要です。さらに、ダウン症の場合、モザイク型に限らず先天的な内臓疾患や合併症に注意が必要です。定期的に受診をし、健康管理を行うことで、将来的なリスクを防ぐことができるでしょう。
ダウン症の子供が成長するにつれ、社会とのかかわりなども必要になります。最近では医療の進歩によって、ダウン症の人の寿命も延び、生活をする時間が長くなっています。生活環境が変わるときには、そこにうまく順応できるようなサポート制度もできているので、そういったことを活用するのがおすすめです。
ダウン症はモザイク型に限らず、原因が詳しく解明されていません。中でもモザイク型は、非常に発症確立が低いために、標準型よりも原因が不明なのですが、他のダウン症と同じように、周りのサポートが大切になります。日本でもダウン症に対する様々な支援が広がってきているので、そういったことを活用しながら生活を支えていければいいのではないでしょうか。